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 三浦から初の全日本王者だ。昨年4位、インカレでは3位…世界王者の声を追い風に、自己最高の壁を一気に突き破った。意外にも高校時代は全くの無名、「地獄だった」三浦1年時もオーラなど皆無。しかし“居場所づくり”から始まったビーチフラッグスとの出合いが転機を呼んだ。そこから早や2年、頂点に駆け上がった足跡に迫る。

聞き手:田畑 弦(クラブHP担当)


決勝戦最終レース。紆余曲折の後に歓喜の瞬間を迎えた。
(再生ボタンクリックでビーチフラッグス男子決勝の場面になります)


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■モーガンから「今のままでいけるよ」

――最初に大会が終わって4日ほど経ちますが(インタビューは10月12日取材)、今の心境とこれまでと何か変わったことはありますか?

「今は大会が終わって少し時間がたったので、気持ちは落ち着いています。色々な方から声をかけられるようになり、本当に色々な方と関わりを持ってここまでライフセービングの活動をしてきたのだと思いました」



――いやあ、やはり全日本1位ですから色々な人から声がかかりますよね。色々な方々の中で印象に残る場面だったり人だったりございますか?

「岩井L.S.Cの西山さん(※1)や西浜S.L.S.Cの北矢さん(※2)といった歴代のチャンピオンだった方からアドバイスを頂いたり、ニュージーランドからいらっしゃったモーガンさん(※3)からアドバイスを頂いたり色々な方から助言をいただいたことがとても頭に残っています。他にも学生の方々からも様々な意見をいただきました」

※1西山一貴(いっき):元日本代表、全日本学生選手権(インカレ)ビーチフラッグス優勝1回('08年)等
※2北矢宗志(もとし):元日本代表、世界選手権ビーチフラッグス準優勝1回('06年)、全日本選手権優勝2回('03,05年)、ビーチスプリント優勝2回('03,05年)等
※3モーガン・フォスター:元ニュージーランド代表、世界選手権ビーチフラッグス3連覇('02,04,06年)、全豪選手権優勝1回('01年)等



――おお…。具体的にお話できるところがあればお聞かせ出来ますか??

「決勝の2本目辺りのレース(※)のときにモーガンさんから『色々変えないで、今のままでいけるよ』と声をかけて頂きました。あと北矢さんからは「インカレの分ぶつけてこいよ」という言葉を頂いたり、西山さんからは次のレースでどのような事を意識すれば良いのかという事、その西山さんと順天(堂大)の選手に今のレース展開について尋ねた時に、こういうレースだったよと教えて下さったりしていただきました」

※決勝戦は9人で始まり、1レース毎に1人が脱落という形式



――モーガンさんから声を掛けられた2本目あたりは北田君ご自身はどんな調子だったのですか?

「準決勝よりは身体は動いていました。心も落ち着いていましたが、その言葉をかけていただけた事で、それ以降のレースはさらに落ち着いてレースができたのではないかと思っています」



――最後のシーン、一度ではフラッグを取れないハプニングもありましたが

「そうですね。手にうまく収まらなかったのは分かったのですが、慌てずに拾いました」



――「それ以降のレースはさらに落ち着いてレースができた」ということですが、北田君の成績を拝見すると、インカレや神奈川県選手権で3位という成績までは記録していました。しかしながら3位以上の世界というのは未知の境地だったかと思います。そこら辺はいかがでしたか?意識してましたか?

「そうですね。ビーチフラッグスでは今までは銅メダルが最高で、インカレでのビーチリレーの銀を含めても、まだ金メダルというものを取ったことがなかったので、今回の大会は1位を取ることは意識していました」



――意識をしていた…大会前はその3位以上の戦いのシミュレーションやイメージトレーニングといった取り組みはされていたのでしょうか?

「はい、色んなレースのイメージトレーニングをしました」



――色んなレースとは…例えば決勝1本目とか?

「そうですね。1本目のレースは自分は1番端のコースだったので、とにかく内側のフラッグをとるだけを意識しました」



――どのスポーツでもそうですが、初戦って一番難しかったりしますからね。

「はい、出だしはとても大切だと思います」



――選手の傾向、癖と言いましょうか、例えばスタートダッシュで2,3歩目でバランスを崩して失速する傾向のある選手もいるなど、北田君にも何らかの傾向があるかと思いますが、そういったこととはどう向き合っていましたか?

「自分の場合、練習するごとに弱点が改善されることもあったのですが、新しい弱点が見つかることの方がどちらかというと多くて、毎回毎回試行錯誤してパフォーマンスを高めようと思っていました。結局、全日本本番でも自分の思った通りに完璧には行かなかったです(笑)」



――対戦相手で思うことはありましたか?"隣がこの選手だったらイヤだ"とか。

「今年の全日本の時は特になかったですね。自分のレースに集中してました」



――総じて推測すると、モーガンさんの言葉以降、落ち着いた試合運びが出来て、3位から上のレースでもその流れで行けたというところでしょうか?

「そうですね。未知の世界でしたが、イメージトレーニングをして落ち着いてレースに挑めたと思います」



――何だかメンタル強いなあ。。

「今までの大会気持ちで負けてた部分もあるので、今回の大会は特に強く気持ちは意識していました」



――北田君のインスタ(グラム)で「今年のインカレの決勝で自分の中では中途半端な気持ちでレースをしてて3位で、それが後悔で全日本では絶対全力出してやるってモチベーションでレースにのぞめた!」と打ち明けてましたが、インカレでは中途半端だったと。。その要因は?

「自分でもよく分からないのですが、アップの時に上手くレースの気持ち作れなくて、そのままレースに臨んでましたね」



――では「今回の大会は特に強く気持ちは意識していました」とは、具体的には?例えば日常生活で寝る時間を守るといった些細なことだったり…?

「睡眠時間は優先してしっかりとるようにしていました。あとは怪我をしないこと、体調管理、2週間後の全日本に向けて限られた時間でできる限りモチベーションをつくり、パフォーマンスを上げる努力をしました」



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