ライフセービングチャレンジ2003・第5回神奈川オープンサーフ&第1回神奈川オープンマスターが9月14日、三浦海岸で行われた。花形競技・アイアンマンレースでは男子が長竹孝介(新島)・女子は新山真以(西浜)がそれぞれ優勝。地元開催の期待がかかった三浦海岸SLSCは高山佳恵(4年)のビーチフラッグス4位を最高位に終えた。その他、エキシビジョンとしてジュニアビーチフラッグスも行われ、残暑の中訪れた海水浴客の関心を集めた。

 

男子アイアンマン優勝を飾った長竹孝介(新島)

■「競技はレスキューのため」男子アイアンマン・長竹
 決勝では但野秀信(万座)、豊田尚久(湯河原)という日本代表クラスをスイムでかわし、最後のスキーで逃げ切り連覇を飾った。レース後、共に戦った選手に深々と礼を尽くし握手、共に戦ったことへの感謝の気持ちを忘れない姿とインタビューへの真摯な応対は、爽やかさと誠実さを感じさせた。昨年、2年生ながらインカレアイアンマン優勝、今年に入ってもサーフカーニバル2位。今後、日本代表入りが期待される。ゴール直後の長竹選手に話を聞いた。

――おつかれさまです。感想は
長竹「嬉しいですね。スイム後のランがきつかったです。ランで抜かれるのがもったいないと、前から先輩に言われていたんで」

――波の小さい三浦で、初のアイアンマン競技でしたが
長竹「そうなんですか。小さい波でも捕まえるのがうまい人がいるんで手ごわかったですね。ボードなら豊田(尚久)さん、スキーなら但野(秀信)さんとか」

――練習はどんなことを
長竹「内容は特に他の浜、クラブとは変わってないと思います。ロングパドルとか。ただ一本一本の集中力が違うと思います。羽伏浦という難所もありますし」

――こういうことを聞くのは恐縮ですが、競技に力を入れることに対して『競技志向』とネガティブに呼ばれがちな点も
ありますが
長竹「いや、僕もレスキューのためだと思っています。万が一を意識してボード、スイムに取り組んでいますよ。新島は波が高いんで、それに耐えられるだけの体力、技術をつけるように心がけています。スキーは先輩に勧められて後から始めたんですけど。正直、スキーの方が今は面白いですね(笑)」



女子アイアンマン優勝を飾った新山真以(西浜)

■「楽しまなきゃ続かない」女子アイアンマン・新山

 女子アイアンマンレースは新山真以選手が優勝を飾った。全日本選手権など常に大会では上位に顔を出す常連。レース直後、話を聞いたがとにかく底抜けに明るい。そんな印象を受けた。5年前、学生時代から憧れていた西浜に移籍。藤沢市にある通称「ライフセーバー通り」の一角に移り住み、トレーニングに集中できる環境に身を置いている。

――おめでとうございます。レースの感想は
新山「気持ちよかったです。レース中、どんどん苦しくなるけどそれに負けない自分でいられるのが気持ちよくて…」

――三浦の海は、どうでしたか
新山「波がなかったんで波乗りで体力を稼ぐことができなかったのが苦しかったです。あとクラゲが多いのがちょっと(苦笑)」

――鵠沼の通称「ライフセーバー通り」に住んでいると雑誌で紹介されましたが
新山「はい。同じ気持ちがある人とやることが、自分を伸ばす近道だと思ったんで、大学(日体大)を卒業して、5年前、前から憧れていた西浜に引っ越しました。アルバイトで生計を立てながらライフセービングに集中できるようにしています。環境には妥協したくないですからね」

――普段はどんな感じでトレーニングを
新山「トレーニングと言ってもガツ練(きつい練習)ばかりじゃないですよ。そればかりだと持たないし。朝、波があるときは波乗りに入ったり、波がないときはスキーで沖に出たり。楽しまなきゃ続きませんよね」

――三浦ではここ数年、競技に関心が薄れているのですが、
新山「もったいないですよね」

――私(筆者)も以前アイアンマンで出場して思ったんですが、ライフセービングの楽しさを半分味わい損ねているというか
新山「そうですよね」

三浦期待の高山佳恵は4位に終わった


■高山、メダル届かず4位。

 三浦期待の高山佳恵(4年)は女子ビーチフラッグス決勝、あと一歩の所で表彰台を逃し、4位に終わった。地元開催の期待に応えられなかったためか、敗退後は無言のまま呆然とした表情。だが予選では同じ三浦の後輩、1年目・土屋奈緒美と隣り合わせた際、配慮してわざと遠い方向のフラッグを取りに行く余裕を見せたのが印象に残った。

 また、三浦の「お家芸」ともいえるレスキューチューブ・レスキューは決勝、8チームが最後まで競り合う中、力尽き7位に終わった。レスキュワーを務めた関口義和(10年目)は現役時代、この種目で96年全日本選手権で3位まで上り詰めた実績を残している。「(社会人となり)競技を再開してからだんだん上がってきてるけど、7位?まだまだだね」と関口。ライフセービングに引退はない、10年選手の28歳は後輩へのいい手本を示した。

■ジュニアビーチフラッグス

 大会開催と並んでエキシビジョンとしてジュニアビーチフラッグスが行われた。この日、三浦地域は33.4度を記録する残暑。訪れた海水浴客の関心を引いた。男子準優勝の岩淵太郎君(小学4年)は「くやしい、何ともいえない」とぶ然とした表情を見せた。

大会後、三浦・小玉俊樹会長は「今夏紙芝居という形でジュニアプログラムを始めたが、今後はビーチフラッグもあわせて、関心を集めたい」と言葉を残した。

「パオ!」のかけ声とともに大きな輪が広がった

■閉会式「パオ!」

 閉会式の最後、豊田勝義・神奈川県ライフセービング連盟理事の音頭で「パオ」と呼ばれる儀式が行われた。

 「パオ」(pau)とはハワイ語で「終わり、終わった」という意。元々ハワイのライフガードたちが一日の無事故に感謝して行っているもの。参加者全員が手と手を取り合って円となり「パオ!」と両手を挙げる光景が、夕陽も沈んだ砂浜に広がった。