2003年の海練習(=海練)が3月9日始まった。川合卓也監視長ら7名がこの日参加。CPR(心肺蘇生法)、フィジカルトレーニング、シミュレーション(※)を消化した。久々の実地トレーニングということもあり、問題点を多く発見するなど収穫ある練習となった。

「胸を張って浜に立って欲しい」 メンバーに期待を寄せる川合
《無難にやるな》

 川合は、失敗を責めることはなかった。

 年明け初の海練、この日メンバーの動きは硬かった。シミュレーション(※)で、2年目・石川瑞季が救助の判断を躊躇(ちゅうちょ)し、3年目・佐藤裕美は初の現場指揮に戸惑いを見せていた。後のミーティングで「溺れている人かどうか迷った」と石川、「何をどう指示していいかわからなかった」と振りかえる佐藤。他のメンバーからも反省点が挙がる中、川合はメンバーに向けてこう語った。

 「(石川へ)溺者かどうか迷ったら行って下さい。夏にこういうことがあってはいけないが、今は失敗しても許容範囲。どんどん攻めて失敗して、問題点を浮き彫りにさせたい。今の時点で失敗しないように無難にやってしまう方が恐い」。決して叱責することなく、今後どうしたらいいかというあり方を示した。

 川合は叱咤してメンバーの力を引き出すよりも、どちらかと言えばほめて伸ばすことの多いタイプ。「みんなには、萎縮しながらパトロールをしてもらうより胸を張って浜に立って欲しいんです」と、胸の内を明かす。

 練習後のファミレスで「(8月)31日、タクヤさん絶対泣くから!」という佐藤に照れた川合。監視長にとって、訪れる夏の2ヶ月間は重圧のかかる日々となる。だからこそ終わった瞬間に流れるであろう涙も、無事故をやり遂げた監視長にしか味わえない。初練習から7月1日の海開きまでまで残り3ヶ月強。試行錯誤を繰り返した末にどう花開くのか、今後に期待だ。


※シミュレーション:三浦で最も力を入れている練習。実際のパトロール中に起こった事故を想定して、溺者、救助者のほか、第2救助者、現場指揮者、現場補助者、本部との無線連絡など、実際の事故に近い状態で行う。

スイム後。3月の海は冷たかった。

■前監視長・旅先からエール

 この日アメリカに卒業旅行中の三好徹・02年度監視長からメッセージが届いた。

「初練習お疲れ様です!
いよいよ3月。もうあと3ヶ月で夏が来ますね。
僕にとっては、みんなをより身近に感じることが出来る季節が近づいてきて嬉しいです。
個々に違いはあれどもみんな自分なりのOFFを過ごしたんでしょうね。楽しみです。

この間、自分がOFFにしたことを思い出してました。色々挑戦したなぁ、と思いつつどれぐらい使ったかなぁ。なんて事も考えました。時間が経つと忘れちゃう事って多いですよね。僕もせっかくその時は自分の力にしたのに、その経験を使わなかったなぁなんて思ってしまう事がたくさんありました。

みんなはどうですか?貴重な時間を過ごして、多くのことを勉強した自分をどれぐらいよく知っていますか?その時は一生懸命やっていても、なかなか忙しくて大切な経験を思い出す時間がなかったりしていませんか?もしそうならちょっとストップして自分が何をしてきたか、自分が何を考えてきたか思い出してはどうでしょう。これから夏に向けてさらに忙しくなると思います。せっかくなので、ぜひその時、その時の自分の経験を120%発揮していく事を考えてみてはどうでしょうか?

あと3ヶ月と少し、みんなにとって素敵な夏が待っています。頑張ろう! 」

●初練習(2)「2年目」。その1
●初練習(3)「2年目」。その2
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